60/3 60番手三子って?

今日は糸のお話です。

加藤完一商店ではポロシャツとソックスを販売していますが、どちらも糸は60番手三子(みこ、と読みます)を使用しています。

なぜ60番手三子を使用するのかご説明します。

番手とは

知っている方もいらっしゃるかもしれませんが、番手は糸の太さを表す単位です。
1ポンド(約453g)の重さで840ヤード(約768m)の長さを「1番手」と定めています。つまり、1ポンドの重さで1,680ヤードの長さとなるものを2番手といいます。同じ重さ(1ポンド)のコットンで倍の長さの糸を作るので、2番手は1番手より細くしなければいけません。ということで、この番手の数値が大きければ大きいほど糸が細いということですね。

番手が大きくなるほど糸は細くなるので、生地はやわらかく、肌触りのよいものになります。一方、番手が小さいものは糸が太いため、丈夫で透けにくい生地になります。
Yシャツなどは使用されている糸の番手が記載されている場合があります。高級シャツの場合、80〜120番手の糸を使用し上品で高級感のある物が多いです。



ちなみにコットンの綿番手と、ウールなどの毛番手はルールが異なります。
「綿番手で言うと…」などと、毛番手を綿番手に換算し直して話をする場合もありややこしいです。。。

 

このように糸は太さを決めて紡績します。さらにそれを撚って糸をつくります。

撚っていない1本の糸は単糸、2本撚った糸は双糸、3本撚った糸を三子といいます。

さて本題です。

加藤完一商店の糸は細番手といわれる60番手の三子の糸(60/3と表記します)を使用しています。
ではなぜ加藤完一商店では60番手三子の糸を使用するのでしょうか。

ムラがなく、強度は倍以上

加藤完一商店の糸は60番手が3本なので、大体20番手くらいの太さの糸になっています。初めから20番手の糸を作ればいいのに、と思った方はスルドイです。これには理由があります。

撚り合せた糸は単糸よりも太さが均一な糸になります。単糸には太さムラがありますが、2本合わさるとムラを打ち消し合い、より均一になります。合わせる本数が多いほど均一なムラのない糸になります。

また強度も変わります。双糸は強さは2倍ではなく、単糸の2.5~3倍になります。お互いの糸が補強し合い、1本の糸と比較すると2倍以上の強度になります。

こんな理由で初めから20番手単糸をつくるのではなく、60番手をつくり、それを三子の糸にしています。

肌触りと編み地の美しさ

単糸より双糸や三子の方が強度があることがわかりましたね。でもなぜ三子にまでする必要があるのでしょう。双糸でも十分に強度はあります。これにも理由があります。


 


双糸の場合と、三子の場合の糸の形状を図にしました。

双糸は横長の糸になっているのが分かります。一方、三子はより丸に近い形になっているのが分かります。
この形状の違いが生地にした際の肌触りに影響します。
より丸みを帯びた糸の方がかどがなく、肌触りのよい生地になるのです。また表面に現れる編み地もより美しく見せてくれます。

三子は管理が難しく、3本の糸の撚りのバランスが取れていないと編み立てした生地が斜行してしまう恐れがあります。ニットポロの場合、18ゲージという非常に細かな編み立てをするデリケートな設備を使用するため尚更管理が難しいです。
しかしそこは紡績工場のバランス調整と、ニット工場の設備コントロールによって一定の品質の製品がつくられています。
手間がかかり、技術が必要な工程ですが肌触りや強度を追求し、この仕様になりました。

このように糸の強度や肌触り、編み地の美しさなど、糸の番手と撚りが製品に与える影響は非常に大きいです。
皆さんも普段、服を購入される際には是非注目してみてください。